目指せ!プロの薬物乱用防止教室講師〜第4弾

薬剤師

こんにちは。アスリート薬剤師 with ファイナンシャルプランナーのじんじんです。

今回も薬物乱用防止教室シリーズです.

今回はいま話題の『市販薬のOD』について考えてみたいと思いますのでよろしくお願いします!

市販薬とは

『市販薬のOD』と言っても、そもそも『市販薬とは』とか、『ODとは』という定義のような部分が曖昧では話が進みません。

薬には大きく分けると「医療機関を受診して医師の処方に基づいて使用される薬」と、「自ら薬局やドラッグストアに行って購入する処方箋を必要としない薬」に分けられると思います。

このうち、後者の薬を一般に『市販薬』と呼んでいます。

市販薬は体調不良時にすぐに入手することができる点や、軽症の場合に医療機関を受診せずに使える点など、上手に使うことで我々の生活に役立つ存在です。

近年ではスイッチOTCといって、元々医療用で処方箋が必要だった医薬品について、有効性や安全性が検討された結果、市販薬として販売可能と判断されたものも増えてきています。

代表的なものとしてはロキソニンやガスター、今回のテーマにも関連するメジコンなどが該当します。

ODとは

次に今回のキーワードの2つ目である『OD』についてです。

ODとは、Over Dose(オーバードーズ)の略で、「過剰摂取」という意味です。

薬のODという場合は、薬を定められた用法・用量を超えて服用することを指し、『市販薬のOD』では、一度に10錠〜100錠近く服用するケースもあります。

薬には定められた用法・用量がありますが、これは薬の有効性と安全性を考慮して決められています。

したがって、それを逸脱するということは、有効性や安全性については担保されないということになります。

つまり、何が起きるかわからないという危険性があるということです。

市販薬乱用の現状

さて、ここまで『市販薬のOD』というテーマの基礎になる知識を整理してきました。

次に、薬物乱用における市販薬の位置づけを考えてみたいと思います。

みなさんにとって、薬物乱用といえば「麻薬」「覚醒剤」「大麻」といった違法薬物が頭に浮かぶのではないでしょうか。

たしかにそういった薬物の乱用は続いており、ニュースなどで報道されることも少なくありません。

では、市販薬というのはどうなのでしょうか?

そもそも、市販薬を服用することは全く違法ではありません。

そのため、市販薬を毎日服用したり、過剰に服用したりしても逮捕され罪に問われるということは基本的にありません。

日本の薬物乱用に関する資料の多くは、検挙された人数や服役した人数など、警察が介入した件数に基づいて発表されます。

しかし、市販薬の乱用については警察が介入することが稀であり、基本的には検挙・服役といった結果にも繋がらないため、正確な現状がつかみにくくなっています。

ここで1つ資料をご紹介します。

これは国立精神・神経医療研究センターという施設が経年的に行っている調査の報告から、じんじんが作図したものになります。

図のタイトルにも記載していますが、このグラフは10代で、精神科医療施設で薬物依存症の治療を受けた患者さんの主たる薬物の割合です。

2022年の結果を見ると、覚醒剤が4.3%, 大麻が10.9%である一方、市販薬が65.2%となっています。

2014年までは市販薬は0だったのが、8年間で半分以上の割合を占めるようになっています。

もちろん、20代以上や精神科医療施設での治療を受けていない方を含めればこれとは異なるデータが得られると思いますが、このグラフだけでも市販薬乱用が大きな問題であることはご理解いただけるのではないでしょうか?

なぜ市販薬のODなのか

市販薬をODするケースはその理由として「周囲に迷惑をかけない一人で行う自己治療」という側面があると言われています。

これは、日々暮らしていく中でとてもつらいことや生きていくのが嫌になったときに、「自分でなんとかしなきゃ」という思いで頼った相手が市販薬だったということです。

多くの麻薬・覚醒剤・大麻使用者のように快感や楽しみ、興奮を得るためではなく、つらい気持ちを自力でどうにか治療しようとしての市販薬ODという姿が見えてきます。

また、市販薬は法律で規制されている薬物ではなく、当然ですが合法ですので、市販薬を購入、所持、使用してもそれが本来の目的から逸脱していたとしても逮捕されたりすることがなく、罪に問われないという性質も使用のハードルを下げる要因になっていると思います。

さらに、10代以降の女性の場合、月経痛のコントロールのために市販の鎮痛薬を使用する方は少なくありません。これも市販薬との距離が縮まり、使用のハードルを下げる要因と言えると思います。

そしてもう一つ、近年のドラッグストアの商品の充実ぶりも影響している可能性があります。

ドラッグストアは必ずしも薬を買いに行く店ではなく、お菓子やジュース、さらにはドラコスと呼ばれる化粧品を購入するためにも訪れる場所でもあり、非常に身近な場所となります。

このような環境も市販薬のODが広がっていく要因と言えると思います。

まとめ

今回は市販薬のODに関する基礎知識や背景のご紹介でした。

次回以降の薬物乱用カテゴリーの投稿では、具体的な薬剤について考えていきたいと思います。

興味を持っていただける方がおられると幸いです。

では、また。

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