こんにちは。
アスリート薬剤師のじんじんです。
今回は、薬剤師としての内容ではあるものの、ここ数回の服薬指導風景シリーズから少し離れて、医師との関係について考えてみようと思います。
じんじんは病院に勤めていますので、医師との物理的な距離は近いと思います。
調剤薬局にお勤めの薬剤師さんはじんじんよりも医師との間に壁を感じておられるかもしれません。
今回は病院内の医師と薬剤師の関係性の話になりますので、調剤薬局の薬剤師さんにとっては必ずしもそのまま全てが当てはまるわけではないかもしれません。
じんじんは今の病院に10年以上勤めています。
病院の理事長には、じんじんが就職した時からお世話になっています。
そして院長とはもう少し短い付き合いになります。
ちなみに、じんじんの勤めている病院は精神科の病院なので、当然ですが精神科医がメインです。
理事長、院長の他に精神科医が4人おられます。
精神科以外では、内科の医師が常勤で1人、外科の医師が非常勤で1人となっています。
精神科医との関係
精神科医との関係は絶妙なバランスだと思います。
理事長、院長ともにじんじんのことは一定程度評価していただいていると思います。
先生方は日々患者さんの診察をして、お薬の処方をされます。
じんじんが就職してしばらくの間は
- 薬剤師が医師に意見するな
- 薬のことは新人薬剤師よりも医師の方が詳しい
- 副作用のことばかり言うな
といった空気が濃厚でした。
でも、若かったじんじんは怖いもの知らずだったので、言いたいことを言いまくっていました。
今思えばなんと恐ろしいことでしょう。
ターニングポイント①
でも、ある時に医師からの評価が変わり始めました。
きっかけは勉強会でした。
医師向けの勉強会は医師会や製薬会社、行政が主催するものなどがあり、多くは薬剤師でも参加できます。
じんじんは勉強会があればほぼ全て参加していました。
実際、週に3回、4回と参加していました。
当院の医師も参加していることがあり、そうすると「君も来てたのか」と声をかけてもらえていました。
これを数年続けていました。
あるとき、当時の院長(現在の理事長)から、「この前の勉強会も参加したの?僕は行けなかったんだけど、どんな話だった?」と聞かれました。
ちょうど参加していたので、「これはチャンス!」と思って、おおよその内容を説明しました。
そうすると「そうかぁ…。で、君の意見はどう?」とさらに追加の質問。
ここぞとばかりに自分がそれまでに勉強してきた知識を総動員して、自分なりの考えをお話ししました。
それを聞いた院長は「よく勉強してるし、しっかり考えてるんだね」と。
これを境に、院長から薬に関するお尋ねが舞い込んでくるようになりました。
ターニングポイント②
じんじんは入院患者さんのベッドサイドにお邪魔して、お薬の話(服薬指導といいます)をさせていただくことがあります。
あるとき、20代の女性患者さんの服薬指導にお邪魔しました。
患者さんの病室に入って、自己紹介をして、お薬の説明をひと通りさせてもらいました。
ただ、じんじんが説明している間、患者さんは頷くことはあっても声を出されることはありませんでした。
そして、じんじんが「お薬のことで何か気になることとか、心配なこととかないですか?」とお尋ねした時です。
患者さんの頬を涙がスーッと流れました。
でも、患者さんは何も話し始めません。
じんじんは「よし、患者さんが話し始めるまで待ってみよう」と思い、そのまま病室の椅子に座っていました。
しばらくして、ついに患者さんが「先生、ヒマなの?」と半分笑いながらおっしゃいました。
それもそのはず、気付けば黙って座って待ち始めてから45分が経過していたのです。
これでは患者さんが「この人ヒマなのかな?」と思っても仕方ありません。
しかし、これがこの患者さんとの会話のきっかけとなり、その後は入院までの辛かったことや、薬を本当は飲みたくないこと、家族も薬を飲むことに反対していることなどを話してくださいました。
そして主治医にこの服薬指導の状況を報告したとき、「私も聞いたことのない話ですね。貴重な情報を有難うございました。今度ご家族も含めてしっかり話をしようと思います」と言っていただきました。
今思えば、患者さんにとっては迷惑だったかもしれません。
でも当時はそんなことも全く気づきませんでした。
実はその患者さんとは今でも外来でお会いするのですが、折に触れて「じんじん先生って私の病室でサボってたんでしょ〜」なんて言われます。
でもやっぱり嬉しかったですね。
ターニングポイント③
繰り返しになりますが、じんじんが勤めている病院は精神科の病院です。
もちろん精神疾患の治療のために患者さんが入院されます。
でも、患者さんは精神疾患だけでなく、内科の病気も持っておられたりします。
高血圧、脂質異常(高脂血症など)、糖尿病、喘息などなど。
入院すると精神科医である主治医がこれらの疾患の治療も行う必要があります。
しかし、専門の診療科(精神科)以外のお薬についてはあまり詳しくない先生が多いのです。
そこでじんじんの出番です。
精神科医から「〇〇さんは入院前はAとBとCの薬を飲んでいたみたいなんだけど、うちではどうしたらいいかな?」との相談が舞い込みます。
じんじんは薬剤師としての知識を総動員しながら、お薬の種類、量、飲み方まで提案します。
ここで間違った提案をしてしまうと、医師からの信頼が低下してしまいますし、何より患者さんの症状悪化につながる可能性が高くなるので毎回が真剣勝負です。
じんじんが提案したお薬の内容で主治医が納得してくれて、提案通りの処方箋が出され、それから患者さんの病状がうまくコントロールされているのが確認できた時は嬉しいですね。
3つのターニングポイントをご紹介しましたが、いずれも医師の信頼を勝ち取ったことで医師との関係が良好になっていったエピソードでした。
医師との関係性に悩んでいる薬剤師さんがおられましたら、医師との信頼関係をコツコツ積み上げていくことが遠回りのようで最短ルートだと心に留めておいていただくと良いと思います。
精神科医以外の医師との関係
前述しましたが、じんじんの勤務先には常勤の内科医と非常勤の外科医がいます。
これらの体の病気を診る医師は精神科医とはまた別の視点から患者さんを診ておられます。
ですので、精神科医の薬の使い方に疑問を持つことも少なくないようです。
あるいは、治療の優先度に疑問を持つこともあるようです。
そんな時にじんじんは内科医・外科医に近づきます。
そして耳元で囁きます。
「主治医の〇〇先生は、斯く斯く然々といった理由でAという薬を選ばれているみたいですね」
「主治医の△△先生は、身体疾患のことも気にしておられたので、先生の意見を頂戴できれば私からお伝えしますが」
医師同士はみんながみんな仲が良いわけではないんです。
もちろん、表立って揉めるわけじゃないですし、患者さんを治して差し上げたいという気持ちは一致しています。
でも、お互いに専門領域があるが故に、相手の専門領域のことには口を出しづらいという意識があるのです。
そんな時こそ薬剤師の出番です!
薬が関わる内容であれば仲介することもできますし、情報共有ツールになることだってできます。
これは大きな視点で見れば患者さんの治療をより良いものにしたり、より安全性を高めたりといったことにも繋がります。
医師と良い関係でいたいな
これは全ての薬剤師の思いではないでしょうか。
薬剤師は医師が発行した処方箋をもとにお薬を調剤したり、服薬指導をしたりすることが基本になります。
もちろん近年では「対人業務にシフト」と言われ、さまざまな取り組みをしておられる薬剤師さんも少なくないと思います。
でも、やっぱり医師との関係性を良好に保つことは重要だと思います。
これは安全で適正な、そして良好な薬物療法を患者さんに提供する上でとても大事なことだからです。
関係性が良好であればこそ、コミュニケーションが取りやすくなりますし、情報共有がスムーズになります。
医師と良い関係を作るために、何もゴマをする必要はありません。
イエスマンになる必要もないと思います。
大切なことは「地力をつけること」ではないでしょうか。
ここで言う”地力”は薬の知識だけではありません。
病気に関する基礎的な知識も必要ですし、患者さんの情報や変化を捉えるアンテナの感度も必要です。
そして医師や他の医療スタッフ、そして患者さんやそのご家族と適切にコミュニケーションが取れるだけの対人スキルも必須です。
この”地力”は一朝一夕ではなかなか身につかないと思います。
でも、努力を続けていけば必ず身を結びます。
少なくともじんじんはそう信じています。
薬剤師の皆さん、”地力”を鍛えて医師と良好な関係を作って、充実した薬剤師Lifeを送っていきましょう!
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