こんにちは。アスリート薬剤師のじんじんです。
最近は本業が忙しく、なかなかアスリートできていません。
このブログを読んでくださっている方々がどのような職業に就いておられるのか、学生生活を送っておられるのか、あるいは自分の時間をゆっくりとって過ごしておられるのかはわかりません。
でも、日常生活の中で謝る機会がない方は少ないのではないでしょうか。
じんじんは昨日、患者さんに謝りました。
そしたら患者さんとそのご家族に大変驚かれました。
そのエピソードを紹介しようと思います。
なお、個人情報の保護を目的に、本質に影響を与えない部分で一部脚色しています。
謝るシチュエーション①「お薬の間違い」

薬剤師の仕事において「謝る」と言えば、主に「お薬の間違い」についてではないでしょうか。
患者さんの命に関わるものを扱っているわけですから、間違いがあってはいけません。
しかし、どうしても人間なので間違いをゼロにすることはできないのです。
そうすると当然、患者さんやご家族に謝罪をすることになります。
本当に申し訳ないという気持ちを込めて謝り、可能な範囲内での事後対応を行い、再発防止に取り組むことをお約束します。
間違いの内容や結果によっては、法的措置の対象となることもあります。
しかし、間違えた以上は最後まで責任を持って対処していく必要があります。
謝るシチュエーション②「お待たせしています」

患者さんは医師の診察を受けた後、お薬をもらうために薬局に向かいます。
病院の中に薬局がある場合には、その窓口に向かうケースもあるでしょう。
いずれにしても、診察を終えてもお薬を受け取るまでには待ち時間が発生します。
この待ち時間が長いと、患者さんから「まだですか?」というお声を頂くことになります。
薬剤師もサボっているわけではありません。
必要な確認事項や事務的作業もありますし、お薬を間違いのないように準備する必要があります。
そして、その患者さんに合わせた説明ができるよう、場合によっては調べ物をすることもあります。
そうこうしているうちに待ち時間が長くなってしまうのです。
もちろん患者さんに非はありません。
ですから、「まだですか?」とおっしゃられる気持ちは当然だと思います。
これに対して「薬剤師だって大変なんだよ!」と思ってしまう薬剤師さんは残念ですね。
謝るシチュエーション③「お薬の在庫がない」

薬局にはたくさんのお薬の在庫があります。
病院や薬局の規模や扱う診療科の種類によりますが、一般的には数百種類以上あるのではないでしょうか。
それでも「お薬の在庫がない」という状況が発生します。
いつもは1ヶ月分のお薬をもらって行かれる患者さんが、今回に限って2ヶ月分の処方箋。
在庫は1ヶ月分しかない。
これが「お薬の在庫がない」ケースの1つめです。
また、これまで扱ったことのないお薬の処方箋が来た場合。
そもそも薬局内にそのお薬そのものがないということも起こります。
特に調剤薬局で、普段はあまり処方箋を持ち込まれることのない、遠方の医療機関の処方箋などではありがちです。
これが「お薬の在庫がない」ケース2つめです。
いずれにしてもやはり患者さんに非はありません。
薬剤師は在庫がないことを謝罪して、急いで手配するので待っていただくのか、後日取りに来ていただくのか、あるいは後ほどお届けするのかなど患者さんに対応をご相談し、できるだけご迷惑をおかけしないようにします。
このようなパターンでの謝罪は薬剤師の方であれば身に覚えがあると思います。
非常に有能な薬剤師さんで、在庫管理も完璧な薬局であればすべて未経験という方もおられるかもしれませんが。
謝ったら驚かれ喜ばれてしまった!
さて、ここから本題です。
昨日のことです。
次のような患者さんです。
10代半ばの女性
- とても不安・緊張が強く、学校に行けない
- しっかり寝ても朝がすっきり起きられない
- 午前中は体調が優れない
といった症状で1週間前に初診。
初診時、今回ともご両親が付き添い。
今回が当院2回目の受診で、初診の際もじんじんがお薬をお渡し。
初診時には不安を軽くするお薬を2種類(1日2回 朝夕食後)、どうしても不安が強いときに頓服で1錠飲んでもらうお薬1種類を1週間分お渡し。
今回は初診時と同じ不安を軽くするお薬2種類(1日2回 朝夕食後)はそのまま継続。
どうしても不安が強いときに頓服で飲んでもらうお薬 を1錠から2錠に増量。
2週間分の処方箋でした。
お薬の準備ができたので、患者さんをお薬窓口にお呼びし、前回のお薬を飲んだ感想をお尋ねしました。
そしたら
- お薬を飲み始めて2~3日はムカムカした。今は大丈夫になった。
- お薬を飲み始めてから昨日まで、朝から顔が腫れぼったくなった。今日は大丈夫だった。
- 頓服の薬を飲んだけど、効いているような効いていないような感じだった。
というお返事が帰ってきました。
じんじんは思わず「ごめんなさいね」と言ってしまいました。
10代の女の子がいろんな悩みや不調を抱えて、せっかく病院に来てくれて、お薬を飲んでくれたのに、
ムカムカしたり、顔が腫れたり、そのうえ頓服の効果は不十分。
申し訳ない気持ちでした。
もちろん診察をして、お薬を選んだのは医師です。
でも、薬剤師として自分が関わったお薬で患者さんに副作用が出て、効果があまり実感してもらえなかったというのは非常に申し訳なく思います。
それで「ごめんなさいね。せっかく病院に来てくれてお薬飲んでくれたのに、いやな思いばかりさせたみたいで。」とお伝えしたのです。
そしたら付き添いで来られていたご両親が「えっっ?」という顔をされたのです。
じんじんは「何か気に障ることを言ってしまったか?」と自分の言ったことを頭の中で振り返りました。
するとお父様から次のような趣旨の言葉を頂きました。
- 薬剤師さんからそうやって謝られたのは初めてだった
- これまでの薬剤師さんは「副作用は多少は仕方がない」と言っていた
- これまでには「医師が選んで出したお薬ですから」と言われたことがあった
- これまでに会った薬剤師さんの言っていることは間違っていないと思うが、じんじんさんの言葉はうれしかった
じんじんは驚きました。
謝ったら喜ばれてしまったのです。
これまでに接した薬剤師さんを否定するつもりはありません。
確かに副作用のない薬はありませんし、多少の副作用は我慢していただくこともあります。
診察して、お薬の内容を決めるのは医師で、そこに薬剤師が意見を言える環境はあまり整っていません。
でも、だからといって自分の手でお渡ししたお薬が患者さんにとって良いものにならなかったことは、自身と無関係なのでしょうか?
じんじんはそう思えないのです。
「飲んでくださいね」と言ったのは誰ですか?
そう。薬剤師のはずです。
「飲んでくださいね」と言ったからには、”飲んだ後”まで気にして差し上げても良いのではないでしょうか。
じんじんが謝ったことには批判もあるかもしれません。
薬剤師がするべきことではないという意見もあると思います。
でも、じんじんはじんじんはこの患者さん、患者さんのお父さんとの会話でうれしくなりました。
そして何より、患者さんとお父さんが笑顔で「ありがとうございました。またお願いしますね」とおっしゃられながら帰路につかれたこと。これがとてもうれしかったです。

まとめ
薬剤師が「医師の処方箋通りにお薬を揃えてお渡しする人」だったら今回のようなケースで謝ることはないのかもしれません。
でも、じんじんはそれではなんとなく居心地が悪いのです。
自分が関わったお薬で生じた結果については、最大限寄り添って、自分事として捉えて、謝罪を含めて誠実に対応する。
これがじんじんの思う薬剤師にとって大事なことなのです。
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