じんじんの服薬指導風景⑨

薬剤師

皆さんこんにちは。

アスリート薬剤師のじんじんです。

今日も服薬指導風景シリーズです。いよいよ2桁が目前の第9弾になります。

今回もこれまで同様、以下の点をご理解いただいた上でお読みください。

  • プライバシーに配慮して、趣旨を逸脱しない範囲内で一部脚色等を施しています。
  • あくまでもじんじんの個人的な経験であり、すべての方に一般化されるものではありません。
  • 患者様お一人おひとりで状況は異なりますので、ご自身に置き換えて読まれる場合にはご注意ください。
  • 本記事の内容を参考にして頂いたり、実際に真似て頂いたりした際に生じた結果について、当ブログおよびじんじんは一切の責任を負いません。

じんじんの服薬指導風景⑨〜突然電話をかけて来られた50代の統合失調症患者さんのケース〜

今回は統合失調症患者さんとの風景です。

患者さんは50代の男性で、自宅でお父さんと犬とウサギと一緒に暮らしておられます。

2年ほど前まで入院しておられた患者さんで、入院期間は約3年間でした。

退院後はやや不定期ながら通院していただいていて、お薬も複数お出ししています。

複数のお薬があるため、飲み間違いを防ぐために一包化してお渡しします。

一包化というのは、複数のお薬を服薬タイミング(「朝食後」や「寝る前」など)ごとに一つの薬包にまとめることです。

先日この患者さんから突然お電話をいただきました。

患者さん:あー、じんじん先生ね。この前もらった薬は勝手に変えてたでしょ(怒)

じんじん:〇〇さん、こんにちは。急にどうされたんですか?ちょっと確認しますから、状況を教えてください。

患者さん:いやね、先生からはお薬は変えないでそのまま出すって言われたんだよ。それで、さっきじっくり見たら、袋の中の錠剤が大きくなっているわけ。勝手にお薬を変えたんでしょ。

じんじん:〇〇さん、今カルテと処方箋と両方確認したんですけど、お薬は変わっていないですよ。

患者さん:いや、絶対変わってる。コソコソ隠そうとしないでよ。

じんじん:それでは、どの錠剤が大きくなっているようですか?

患者さん:名前はわからんけど、白くて袋の中で一番大きいやつだよ。茶色で数字が何個か書いてあるやつ。

じんじん:なるほど。それでは◇◇というお薬になりますね。このお薬はもう半年以上同じで続けて飲んでいただいていますよ。錠剤の大きさは変わっていないですし。

患者さん:だから、大きくなっているって言ってるでしょ。どうせ俺がおかしな事ばっかり言うから、隠れて薬を増やしたんでしょ。

じんじん:そんなことしませんよ。

患者さん:いや、じんじん先生も医者とグルになって俺に変な薬を飲ませようとしてるんでしょ。それとも近所のおばさんから俺が大声を出してるって電話があって、こっそり増やそうとしたんでしょ。

じんじん:(う〜ん、このままでは堂々巡りだなぁ…)

じんじん:なるほど、勝手に薬を増やされたと感じておられるんですね。もしそうだとしたらとても嫌な気持ちになるでしょうし、不安ですよね。そんな不安な気持ちにさせて申し訳ありませんでした。ただ、先ほど、「大声を出している」っておっしゃっていましたけど、最近は大声を出すことが増えました?

患者さん:うん。親父の認知症がひどくなってきてて、全然俺の言うことを聞いてくれないんだよね。それで何回も同じこと言わないといけなくて、だんだんイライラしてきてつい大声になって。

じんじん:お父様の介護で大変なんですね。そう言う時はどうしても声が大きくなってしまいますよね。そんなに大変なのに、しっかりお父様のお世話をしておられて、頭が下がります。でも、もしかして、ご自身でもこのままじゃ良くないなって思っておられるんじゃないですか?だけど、どうしていいかわからなくて不安になったり。

患者さん:そうなんだよね。大きな声を出した後で、「また言ってしまった」って後悔するんだよね。でも、他に頼れる人もいないし、どうしようもなくて。

じんじん:そんな不安な時にご自身のお薬を見たら大きくなっているように見えて、ますます不安になられたんですか?

患者さん:うん。じんじん先生が変わってないって言うならそうなのかもしれないけど、でも一回気になったらもうどうしようもなくて。

じんじん:そうだったんですね。お薬をお渡しする時にもっとゆっくりご説明差し上げたらよかったですね。申し訳ありませんでした。今度来られた時に一緒に確認しましょう。

患者さん:ううん。もう大丈夫だよ。じんじん先生が「間違いない」って言うなら俺の勘違いやろう。

じんじん:お父様の介護で大変ですよね。何か困ったことがあったら電話してくださいね。私ではわからないことでも、病院にはいろんな専門の職員がいますから。

患者さん:うん。ありがとうね。でも、急に怒鳴って電話してすまんかったね。また今度病院行くけん、よろしくね。

じんじん:またお待ちしていますね。

じんじんの服薬指導ポイント

  • 感情的になっている患者さんに巻き込まれない。
  • 患者さんのおっしゃることは遮らずに最後まで聴く
  • たとえ患者さんが間違っておられるケースでも、それを正面から突き付けて突っぱねない
  • 患者さんが困っているのは間違いないので、その”困り感”に寄り添う
  • 堂々巡りになりそうな時は、きっかけを逃さず、敢えて少し違った話題に外れる
  • とにかく、患者さんを大事に思っていることを言葉にしてお伝えする

じんじんは一般的にクレームと呼ばれるようなお電話やお申し出をいただいた時にはこれらのことを意識してお相手させていただきます。

精神疾患をお持ちの患者さんの多くは何らかの不安を抱えておられることが少なくありません。

そしてその不安の実態がわからなかったり、どう対処して良いかわからなかったりといった方も多く、ますます不安が強まっていたりします。

おそらく今回の患者さんの電話の本質は「お薬が違う」ではなく、「困り事や不安なことがある」だったのだと思います。

ここで「薬は間違っていません」の一点張りだと、患者さんの困っていることの本質に迫ることができません。

いつでも患者さんの”困り感”を察知できる薬剤師でありたいものです。

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