じんじんの服薬指導風景⑩

薬剤師

皆さんこんにちは。

アスリート薬剤師のじんじんです。

今日は服薬指導風景シリーズの記念すべき第10弾になります。

特技が三日坊主のじんじんにしては頑張っていると自画自賛しています。

今回は具体的な患者さんの例というわけではありません。

実はここ1週間の間に、お二人の患者さんが入院されました。

このお二人の患者さんのエピソードに共通点がありましたので、それをご紹介させていただこうと思います。

10回目になりますが、今回も以下の点をご理解いただいた上でお読みください。

  • プライバシーに配慮して、趣旨を逸脱しない範囲内で一部脚色等を施しています。
  • あくまでもじんじんの個人的な経験であり、すべての方に一般化されるものではありません。
  • 患者様お一人おひとりで状況は異なりますので、ご自身に置き換えて読まれる場合にはご注意ください。
  • 本記事の内容を参考にして頂いたり、実際に真似て頂いたりした際に生じた結果について、当ブログおよびじんじんは一切の責任を負いません。

じんじんの服薬指導風景⑩〜ご家族がおいでに!〜

Aさんのケース

実はこの方はじんじんの服薬指導風景シリーズの⑦でご紹介させていただいた患者さんです。

この患者さんのエピソードに関しては、服薬指導風景⑦をご覧ください。

ご主人から数回の電話相談があった患者さんでしたが、最終的には自宅では不安に押しつぶされてしまいそうで、生活できないとのことでした。

お薬についても、「不安だからお薬を飲みたい。でも、そのお薬にも不安を感じる」の繰り返しでした。

ご主人もだんだんと疲れてきてしまい、このままではご家族が総崩れになるリスクがありました。

主治医とじんじんと2人で入院を勧め、悩まれたようですが最終的には入院を希望されました。

ただ、実際の入院の日にはじんじんは所用があって病院を不在にしていました。

入院翌日にはカルテの記事を見て、無事に入院されたことを確認し、薬剤師としてAさんのお薬を調剤したりしていました。

Aさんが入院して5日くらい経った時だったでしょうか、じんじんのいる薬局のカウンターから薬剤師を呼ぶブザーが鳴りました。

外来患者さんかなぁと思いながら「は〜い」と返事をしてカウンターへ。

そうするとそこにはAさんのご主人がおいでになられていました。

通常、入院中の患者さんのご家族が薬局に来られることはないので、正直なところ「なんでだろう?」と思いました。

すると…

Aさんのご主人:あー、じんじん先生。妻が入院したんですよ。

じんじん:あぁ、こんにちは。そうでしたね。しっかり治療に専念していただけるようサポートしていきますね。

Aさんのご主人:ありがとうございます。でも、私が今日来たのは、じんじん先生にちゃんとお礼を言っておきたかったからでして。

じんじん:お礼ですか?何の…?

Aさんのご主人:実は何回も電話していた時、本当に有り難かったんです。私たち夫婦はただただ不安で、どうしていいか分からなくて。お忙しいとは思ったんですけど、何回も電話してすみませんでした。でもその度に「またいつでも電話してくださいね」っておっしゃっていただいて。それが支えだったんです。

じんじん:(嬉しくて言葉が出ず)

Aさんのご主人:妻が退院したらまた一緒にご挨拶に伺います。それまで妻のことをよろしくお願いします。

じんじん:(泣きそうになるのをグッとこらえて)わざわざおいでいただき有難うございます。奥様の入院中はお薬の面が中心になりますが、治療のお手伝いをさせていただきますね。そしてご夫婦揃ってまたお顔を見せにきていただけるのを楽しみにしています。

じんじん:でも、ご主人さんもきつかったでしょ?奥様を前にして「きつい」っておっしゃるわけにはいかなかったと思いますが。

Aさんのご主人:そうなんですよ。情けない話ですけど、私も眠れなくなりかけていました。

じんじん:そうですよね。正直なところご主人さんのことも心配でした。今は奥様は当院でお世話させていただきますから、ご主人さんもしっかり休んでくださいね。

Aさんのご主人:ありがとうございます。

Bさんのケース

Bさんは60代の男性です。

数年前に当院でうつ病の治療をしておられ、安定したためご自宅の近くの診療所さんにその後の治療をお任せしていた方です。

ここ数日で調子を崩され、不眠・不安・食欲不振・抑うつ気分などが生じたとのことで久しぶりに当院においでになられました。

その日はお薬を3種類お出ししました。

そして翌日に奥様からお電話をいただきました。

その内容は、本人がちょっとした体調の変化を副作用じゃないかと言っているが、どうしたら良いか?というご相談で、気になっておられる変化を一つ一つお伺いしながら、ご説明しました。

さらにその翌日にも奥様から再びお電話があり、とても気分が沈んでいるようで心配でたまらないとのことでした。

奥様も電話口で非常に不安になっておられるようであったため、主治医に入院の検討も含めて相談したところ、この翌々日に入院していただくことになりました。

入院当日は外来でのお薬の処方はありませんので、じんじんはお会いすることはできませんでした。

そして入院された翌日に奥様が薬局のカウンターにおいでになられました。

Bさんの奥様:じんじん先生、本当にありがとうございました。

じんじん:昨日入院されたばかりなので、今はまだあまり大きく改善しているという訳ではないと思いますが、これから当院で責任もって治療させていただきますね。

Bさんの奥様:ありがとうございます。でも、入院前にじんじん先生に電話でご相談させていただいて今があるんです。あの時はもう夫婦で最悪のことも考えてしまっていました。

じんじん:そうだったんですね。ご主人は当然ですが、奥様もお辛かったですね。

Bさんの奥様:でも、そんな時にじんじん先生が「心配な時はいつでも、何回でも電話していいですよ」って言ってくださって安心しました。

じんじん:そう言っていただけるのは嬉しいですが、奥様もお疲れになっているでしょ?

Bさんの奥様:まあ、ここ数日は本当に疲れました。でも、入院の時にはじんじん先生にお礼をお伝えできなかったので、今日寄らせていただいたんです。

じんじん:わざわざ有難うございました。

じんじんの服薬指導ポイント

今回は一般的な服薬指導とはちょっと違った内容でした。

  • 患者さん・ご家族は病気そのものの不安と、お薬に対する不安の両方を持っておられる
  • 患者さんに寄り添うことは大事ですが、ご家族にも寄り添うことが大事
  • ご家族の不安や負担の軽減も忘れない
  • 「いつでも相談できる」という安心感は想像以上に大きいよう

じんじんは今の職場で10年以上勤務していますが、入院した患者さんのご家族がわざわざお礼を伝えるために薬局においでくださったのは初めてでした。

しかも1週間の間に続け様に。

ついつい患者さんご本人にばかりフォーカスしてしまいがちですが、改めて、精神疾患のある患者さんを支えるご家族にも、支えの手が差し伸べられる必要があるんだなぁと実感したエピソードでした。

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