じんじんの服薬指導風景⑧

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皆さんこんにちは。

アスリート薬剤師のじんじんです。

今日はまた服薬指導風景シリーズです。

お読みいただく際は、これまで同様、以下の点はご理解ください。

  • プライバシーに配慮して、趣旨を逸脱しない範囲内で一部脚色等を施しています。
  • あくまでもじんじんの個人的な経験であり、すべての方に一般化されるものではありません。
  • 患者様お一人おひとりで状況は異なりますので、ご自身に置き換えて読まれる場合にはご注意ください。
  • 本記事の内容を参考にして頂いたり、実際に真似て頂いたりした際に生じた結果について、当ブログおよびじんじんは一切の責任を負いません。

じんじんの服薬指導風景⑧〜お薬が早くなくなってしまう70代女性のケース〜

今回は70代女性のケースです。

この患者さんはご主人を自宅で介護しておられます。

ご主人は3つ年上で、アルツハイマー型認知症です。

ご主人は自力で移動することは困難で、ベッドから車椅子にも自力で移ることができません。

また、排泄にも介助が必要で、日常生活全般において援助が必要な状況のようです。

今回の患者さんとこのご主人は2人暮らしで、いわゆる”老老介護”の状態です。

患者さんは、ご主人の介護の精神的な負担などもあり、抑うつ気分・不安・不眠を主訴に数年間通院しておられます。

そしてご主人の介護の関係で受診できる日も限られ、同じ医師に継続的にかかることができない状態になっています。

じんじん:こんにちは、〇〇さん。最近はいかがですか?

患者さん:あら〜、じんじん先生。相変わらず主人の介護でもう大変です。

じんじん:ご主人の介護で大変なんですね。でも、そうやってずっと頑張っておられる姿に頭が下がります。

患者さん:でも先生から怒られたのよ。

じんじん:怒られたんですか?どうしたんですか?

患者さん:実は、本当だったらあと10日分はこの前もらったお薬が残っていないといけないのに、もうないのよ。

じんじん:じゃあ10日分をなくしちゃったってことですか?

患者さん:いや、それが…。多めに飲んじゃったのよ。それでもう残っていないの。

じんじん:多めに飲んじゃったんですね。何かあったんですか?

患者さん:主人の介護で大変で、日中にすごく不安になったりして、辛くて食後の不安の薬を2回分飲んでしまったりして。

じんじん:介護で疲れて不安になって、食後の不安の薬を2回分飲んじゃったりしたんですね。夜の不眠のお薬はどうですか?

患者さん:お薬を飲んで寝るんですけど、夜中に主人のトイレで起こされて、それから眠れないんです。1時間以上眠れなかったときにもう1回分の夜の不眠の薬を飲むんです。

じんじん:夜もご主人の介護で大変なんですね。それで、夜中に起きなきゃいけなくて、その後が眠れずもう1回分飲んでしまったということですか。

患者さん:そうなんです。それで先生に怒られて。

じんじん:ご主人の介護ですごく大変なんですね。それで不安になったり、眠れなかったりして多めにお薬を飲んでしまったということですよね。本当にきつかったんですね。よくがんばりましたね。

患者さん:え?じんじん先生は怒らないんですか?

じんじん:怒りませんよ。でも私は〇〇さんのことが心配です。先生からも言われたかもしれませんが、お薬を多く飲んでしまうと、いつもは出ないような副作用が出てしまうことがあるんです。眠気が出たり、フラフラしたり。介護で大変なのはよく分かるんですが、私はご主人だけじゃなくて、〇〇さんのことも心配なんです。

患者さん:じんじん先生って優しいのね。

じんじん:それに、お薬を飲み過ぎてしまって、もし〇〇さんがフラフラして転んでしまったら、ご主人を支える人がいなくなちゃいますよね。ご夫婦で共倒れになっちゃいますよ。それは一生懸命介護されている〇〇さんにとっても不本意じゃないですか?

患者さん:そう言われればそうよね。

じんじん:ご主人の介護で受診も大変だと思うんですけど、何とか同じ先生に続けて受診できませんか?そうしたら不安や不眠についても継続的に状況が把握しやすいので、お薬の調整なども今よりしやすくなりますよ。

患者さん:う〜ん。娘が月に1回くらいは来てくれるんですけど、あんまり迷惑かけたくないのよね。

じんじん:そうですね。娘さんにもあまり負担をかけたくないですよね。でも、今のような状況が続いて、もし〇〇さんがお薬の飲み過ぎの影響で転んで寝たきりになってしまったらどうでしょう?結果的に娘さんの負担が増えませんか?

患者さん:そうよね。娘に相談してみようかしら。

じんじん:それがいいですね。まずは、〇〇さんの受診日には娘さんに来ていただいて、ご主人を見ていてもらいましょう。それと、お薬を飲み過ぎそうになった時には、電話してください。夜中は無理ですけど、翌朝に電話をください。私が相談に乗りますから。

患者さん:ありがとね。今回は飲み過ぎないように頑張ってみるわね。

じんじん:お願いしますね。

じんじんの服薬指導ポイント

  • 患者さんを怒らない。
  • 不適切な服薬があっても、まずはその理由や状況を確認する。
  • 患者さんの置かれている状況を受容し、共感を示す。
  • 不適切な服薬はご自身にとって有害であることをお伝えする。
  • 不適切な服薬はご自身だけでなく家族や大切な人にも影響を及ぼすことがあることをお話しする。
  • 不適切な服薬をしそうになった時のサポート体制を保証する。

お薬を飲み過ぎてしまうといった不適切な服薬に陥る患者さんは少なくありません。

もちろん褒められたことではないですし、避けていただきたいことです。

でも、そうなった背景があるはずです。

これを聞かずして「飲み過ぎ厳禁!」と言い続けても何の解決にもならないと思います。

じんじんが大切にしている言葉があります。

「患者さん一人一人にその人が紡いできた人生の物語がある。その物語を聞かずして治療などできるはずがない。まずは、患者さんの物語をしっかり聴きなさい。全ての治療はそこから始まります。」

じんじんの尊敬する精神科医

これはじんじんがとても尊敬する精神科医から頂いた言葉です。

そして、じんじんが精神科に勤務する中で一番大事にしている考えです。

これからも患者さんの人生の物語を聴かせていただきながら、患者さんを支えていきたいなと思う今日この頃です。

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